今月の言葉

今月の言葉(8月)第169回 「キャリアの偶発的創造」

キャリア研修を行っていると「やりたいことが特にない」「今まで、自分のキャリアを考えたことがなかった」という方が多数います。そういう方々には、今会社でやっていること(会社から求められていること)に真剣に取り組んでみることを勧めています。目の前にあること、与えられた様々なことに挑戦してみる、するとそのうちに自分が本当にやりたいことや進むべき方向性、目指すべき将来像が出来上がってくるものです。自分が知らない(気付いていない)自分の可能性が沢山あり、その領域に入り込めるかどうか?で人間として厚みや仕事の幅が広がってくるように思えます。

 キャリア形成に関する理論の一つである「プランド・ハップンスタンス」。1999年に、スタンフォード大学の教育学・心理学教授であるクランボルツ教授によって提唱されました。日本語では「計画的偶発性理論」「計画された偶然」などと訳されています。成功を収めたビジネスパーソンを対象にキャリア分析を行った結果、実に8割の対象者が「現在の自分のキャリアは予期せぬ偶然に因るところが大きい」と答えたそうです。偶然の出来事をただ待つのではなく、意図的にそれらを生み出すよう、積極的に行動したり、自分の周りに起きていることに心を研ぎ澄ませたりすることで、自らのキャリアを創造する機会を増やすことができるという理論です。
 自分自身を振返ってみると、学生時代、就職活動で面接官に「営業職はどうですか?興味ありますか?」と訊かれたことがあります。当時は営業に対するイメージがあまり良くなく、「正直、あまり興味がありません」などと生意気な回答をしていました。それから20年ほど経った今現在、営業(お客様への提案)の仕事は自分に合った仕事の一つとなり、とても楽しく遣り甲斐があります。きっと私の印象や適性などを見極め、質問をして下さっていたものと思われます。不要な知識・能力はなく、今与えられている仕事・環境に一生懸命取り組めば、その先に何かが見え、先の道が繋がってくるものです。キャリアに近道などはなく、遠回りだと思っていたことが、実は全て繋がっており、今の自分の糧となっている、そんな人生を歩めればと思います。そのためには、今やっていることを前向きな気持ち(オープンマインド)でしっかりとやり遂げてみる。そうすることで、自然と自分に繋がる「出来事」や「出会い」に遭遇するのではないでしょうか。
 また、企業側でも、適性によるキャリア形成と偶発性を活かすキャリア展開の双方を必要に応じて使い分けていくことが重要だと考えます。キャリアの方向性を定めるのは重要ですが、描いたキャリアステップと現実とのギャップにとらわれないことが大切です。予期せぬ偶発的出来事を上手に活用する(動機付ける)ことによって、ただの偶発的出来事も社員のキャリア形成の力に変えていく環境作りも同時に行っていきたいものです。

(文責:宮城 加代子 2級キャリアコンサルティング技能士/産業カウンセラー)

関連記事