今月の言葉

今月の言葉(2021年8月)第193回 ニーズの本質を探る

ビジネスにおいて、「相手が何を求めているか」を知ることはとても重要なことです。

私たちは会計・税務の専門サービス業として、お客様の会社の財務数字を説明する機会を頂いています。その際、得意げに専門用語を並べ、独りよがりな説明になっていないか、相手の立場になっているか否か注意を要します。ことに、財務数字は会社の業績や財政状態を表すものであり、経営を判断する上での重要な指標となり、お客様に理解をして頂けなければ意味がないからです。

大石哲之著「コンサル1年目が学ぶこと」の中で、同氏はあるコンサルタントがM&Aの調査を依頼された時のニーズの本質を間違えた事例を紹介しています。そのコンサルタントは、徹夜をしながらも買収企業の膨大な量のデータをまとめ上げ、綺麗に報告資料を作り上げました。しかし、そのクライアントは満足しませんでした。なぜならば綺麗にまとまったデータが欲しかったのではなく、その企業価値がいくらなのか、その会社のコアエンジンは何なのかという、この2点(これがニーズの本質)を知りたかったからです。

そのコンサルタントの行った作業は結論を導くためには必要なことであるでしょうが、お客様の真のニーズをキャッチしたものではありませんでした。資料をまとめることに集中し、そのクライアントのニーズの本質を見抜くことができなかったのです。

ニーズには顕在ニーズと潜在ニーズがあります。顕在ニーズとは、お客様自身が欲しいモノやサービスを自覚して表現している状態をいいます。例えば喉が渇いたら水を飲むというように、自身がニーズを満たすことを自覚して行動を起こします。

一方潜在ニーズとは、お客様自身に明確に自覚や表現はありませんが、何かしらの欲求がある状態を示します。

この両方のニーズを氷山に例えると、顕在ニーズが水面上に出ている部分であり、潜在ニーズは水面下に当たる部分になります。潜在ニーズは顧客自身も意識していないため、それを自覚・理解するためには苦労を要しますが、それを発見し充足できれば大きなチャンスにつながります。

私たちがお客様に会社の財務数字を説明する際の、「お客様が求める本当のニーズは何なのか?」「会社の過去の数字を知ることなのか、あるいは未来を創るための参考にしたいのか?」を考えなければなりません。本当のニーズは、会社の数字を通して実態を知り、それを踏まえ、どのように経営に活かして行くかということではないでしょうか。私たちはお客様のお役に立てるように、現在の数字の説明だけでなく、将来予測される数字の説明(先行決算といいます)をするように心がけています。「お客様が本当に求めていることは何か」ということを念頭において、これからもお客様のお役に立つ良い仕事を行っていきたいと思います。

(文責:中道 俊)

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